市場連動型プランは、電気代を節約できる可能性がある新しい選択肢として注目されています。
しかし、デメリットは何があるのか、価格が高騰して反対に損をするのではないか、といった不安を感じる方も少なくありません。
本記事では、市場連動型プランの仕組みやデメリットを、実際のデータも交えて詳しく解説します。
電気料金プランの見直しを考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
市場連動型プランとは?

市場連動型プランのポイントを具体的に解説します。
市場連動型プランの基本的な仕組み
市場連動型プランとは、JEPX(日本卸電力取引所)の取引価格に連動して、電気の料金単価が30分ごとに変動する料金プランのことです。
JEPX(日本卸電力取引所)とは、発電事業者と小売電気事業者が電気を売買する市場を指します。
多くの電力会社が採用している従来のプランでは、1kWhあたりの電力量料金単価は常に一定です。
一方、市場連動型プランでは、電力量料金単価に市場の取引価格が反映され、需要と供給のバランスによって変動します。
たとえば、太陽光発電の発電量が多い晴れた昼間は単価が下がりやすく、需要が急増する夕方や夜間などは単価が高騰する場合があります。
電気料金の内訳と変動する部分
毎月の電気料金は、次の4つの項目で構成されています。
| 基本料金 | 契約アンペアで決定 |
|---|---|
| 電力量料金 | 電気の使用量に応じて計算 |
| 燃料費調整額 | 燃料の輸入価格を反映 |
| 再生可能エネルギー発電促進賦課金 | 再生可能エネルギーの買取に必要な費用 |
このうち、市場価格に連動するのは「電力量料金」です。
電力会社によっては、従来の燃料費調整額を廃止して、市場価格のみを反映させる仕組みを採用しているケースもあります。
市場連動型プランが注目される理由
近年、電気代が高騰している大きな原因の一つが、燃料費調整額の上昇です。
世界情勢の影響で燃料の輸入価格が高騰し、従来の料金プランでは電気代が上がりやすい状況が続いています。
そこで注目されているのが市場連動型プランです。
太陽光発電が多く稼働する日中や、電力需要が落ち着く時間帯には市場価格が下がることもあり、電気の使い方次第で大幅な節約が期待できる点が注目を集めています。
市場連動型プランのデメリット【やばいと言われる理由】

ここでは、市場連動型プランが抱えるリスクについて、次の観点から詳しく解説します。
- 市場価格が高騰する理由
- 実際に電気代が高騰した過去の事例
- 価格変動以外のデメリットや注意点
一つずつ丁寧に確認します。
市場価格が高騰する理由
市場価格が高騰する最も大きな理由は、電気の需要と供給のバランスが崩れるためです。
電気は、電気を使う量(需要)と、発電する量(供給)のバランスを常に保つ必要があります。
バランスが需要の増加や供給の減少によって崩れると、市場価格は大きく跳ね上がります。
具体的には、厳しい暑さや寒さによる冷暖房需要の急増や、発電所の予期せぬトラブル、燃料である液化天然ガス(LNG)の輸入価格上昇などが、価格高騰の主な要因として挙げられます。
実際に電気代が高騰した過去の事例
市場連動型プランが「やばい」といわれるようになった最大のきっかけは、2021年1月に発生した電力市場価格の歴史的な高騰です。
厳しい寒波による電力需要の急増や、LNGの供給不足などが重なり、卸電力市場の価格が異常なレベルにまで高騰しました。
具体的には、約10円/kWhをキープしていた電力価格が、2021年1月には東京エリアで250円/kWhまで高騰し、1月における平均価格は通常の約10倍となりました。
その結果、一部の新電力の市場連動型プランを契約していた家庭では、1か月の電気代が急激に高騰したと考えられます。
このような事態は頻繁に発生するものではありませんが、リスクとして存在することは事実です。
参照元:高騰した日本の電力市場分析と海外市場からの教訓 – 一般社団法人エネルギ―情報センター
価格変動以外のデメリットや注意点
価格高騰のリスク以外にも、市場連動型プランにはいくつかの注意点があります。
まず、毎月の電気代が市場価格の確定までわかりにくいため、家計の予算が立てづらい点が挙げられます。
また、電気代を安くするためには、常に市場価格を意識して電気の使い方を工夫する必要があり、ストレスに感じる方もいるでしょう。
さらに、オール電化住宅向けの夜間割引プランなど、特定のライフスタイルに特化したプランと比較した場合、必ずしも市場連動型プランの方が安くなるとは限らない点にも注意が必要です。
従来の固定料金プラン(従量電灯)との違いを比較

市場連動型プランの特徴をより深く理解するためには、従来の固定料金プランとの違いを知ることが重要です。
ここでは、代表的な固定料金プランである従量電灯プランと市場連動型プランを比較し、それぞれの特徴を解説します。
料金単価の決まり方の違い
従量電灯プランとは、大手電力会社の多くが提供している、最も標準的な料金プランです。
最大の特徴は、料金単価が「固定」であることです。
電気の使用量に応じて3段階で単価が設定されており、使えば使うほど単価が上がりますが、時間帯によって単価自体が変わることはありません。
一方、市場連動型プランの単価は、同じ量の電気を使っても時間帯によって料金が大きく異なる点が特徴です。
メリット・デメリットの比較
従量電灯プランと市場連動型プランのどちらがよいかは、何を重視するかによって変わります。
それぞれのメリットとデメリットを、「料金の安定性」「節約の可能性」「必要な工夫」といった3つの観点から比較しました。
| 観点 | 従量電灯プラン(固定) | 市場連動型プラン(変動) |
|---|---|---|
| 料金の安定性 | 非常に高い(毎月の変動が少ない) | 低い(市場価格により大きく変動) |
| 節約の可能性 | 限定的(省エネ努力が中心) | 高い(使い方次第で大幅な節約も可能) |
| 必要な工夫 | とくに不要 | 必須(市場価格の確認やピークシフトなど) |
料金の安定性を求めるなら固定料金プラン、電気の使い方を工夫して積極的に節約したいなら市場連動型プランを選ぶとよいでしょう。
どちらのプランを選ぶべきかの基本的な考え方
最終的にどちらのプランを選ぶべきかは、電気代に「予測可能性」を求めるか、「総額の安さ」を追求するか、という自身の価値観によって異なります。
毎月の支出を安定させたいのであれば「固定料金プラン」がおすすめで、リスクを取ってでも支出を削減したいのであれば「市場連動型プラン」が向いているといえます。
どちらを選ぶにせよ、まずは電力会社のマイページなどで自身の電力使用パターン、とくにどの時間帯に電気を多く使っているかを把握することが、適切なプラン選択の第一歩です。
【自己診断】市場連動型プランが向いている人・向いていない人の特徴

ここまで解説してきた仕組みやメリットとデメリットを踏まえ、自身が市場連動型プランに向いているのか、それとも避けた方がよいのか、気になっている方も多いでしょう。
ここでは、具体的なライフスタイルを例に挙げながら、プランとの相性を自己診断するためのヒントを紹介します。
自身の生活をイメージしながら、読み進めてみてください。
市場連動型プランが向いている人のライフスタイル例
市場連動型プランのメリットを最大限に活かせるのは、電気を使う時間帯をある程度コントロールできる方です。
たとえば、在宅ワーカーAさんの場合、日中の電力単価が安い時間帯に洗濯や調理などの家事を集中させました。
その結果、従来の固定料金プランと比較して、月々の電気代を大幅に節約できる可能性があります。
このように、日中の在宅時間が長い方や、電気自動車の充電時間を調整できる方、蓄電池を導入している家庭などは、市場連動型プランとの相性がよいといえるでしょう。
市場連動型プランを避けた方がよい人のライフスタイル例
一方で、市場連動型プランによって、かえって電気代が高くなってしまう可能性が高い方もいます。
たとえば、共働きのBさん一家の場合、電力使用が夕方のピークタイムに集中しがちでした。
とくに意識せずに電気を使っていた結果、従来のプランよりも電気代が大幅に高くなってしまうケースも考えられます。
このように、電気代の変動を気にせず電気を使いたい方や、毎月の支出を一定に保ちたい方には、あまり向いていないと考えられます。
契約前に確認すべきチェックリスト
自身が市場連動型プランに向いているか、最終的に判断するためのチェックリストを用意しました。
契約を検討する前に、ぜひ一度確認してみてください。
- 自身の家の電気使用量が、どの時間帯に多いかを把握している
- 電力単価が安い時間帯に、洗濯や調理などの家事をシフトできる
- 市場価格が高騰した場合、一時的に電気代が上がるリスクを許容できる
- 電力会社のアプリなどで、こまめに電力価格をチェックすることに抵抗がない
これらの項目に多く当てはまるほど、市場連動型プランをうまく活用できる可能性が高いといえるでしょう。
市場連動型プランの電気代を安く抑える3つのコツ

市場連動型プランは、ただ契約するだけで電気代が安くなるわけではありません。
特性を理解して賢く付き合うことで、初めて節約のメリットを享受できます。
電気代を効果的に安く抑えたい場合は、次の3つのコツを意識しましょう。
- 電力単価が安い時間帯を狙って電気を使う
- 太陽光発電量が多い晴れた日の昼間に電気を使う
- 電力会社のアプリやマイページで市場価格をチェックする習慣をつける
それぞれのコツを詳しく解説します。
コツ1:電力単価が安い時間帯を狙って電気を使う
最も基本的かつ効果的なコツは、電力単価が安い時間帯を狙って、電気の使用を集中させる「ピークシフト」をおこなうことです。
たとえば、電力消費の大きい洗濯乾燥機や食洗機、炊飯器といった家電は、タイマー機能を活用するのがおすすめです。
電力単価が比較的安くなりやすい深夜や、早朝の時間帯に家電を稼働するようにして、日々の電気代を少しずつ抑えましょう。
コツ2:太陽光発電量が多い晴れた日の昼間に電気を使う
「電気代は夜間が安い」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、最近では太陽光発電の普及により常識が変わりつつあります。
再生可能エネルギーである太陽光発電は、当然ながら晴れた日の昼間に発電量が最も多くなります。
結果として電力の供給量が増え、卸電力市場の価格が非常に安くなるケースが増えている点が特徴です。
この傾向を理解すれば、日中に在宅している方でも、天気のよい日に家事を済ませることで、効率的に電気代を節約できる可能性があります。
コツ3:電力会社のアプリやマイページで市場価格をチェックする習慣をつける
計画的に電気を使ううえで、非常に役立つのが電力会社が提供するツールです。
多くの新電力では、スマートフォンアプリや契約者向けのマイページで、翌日の市場価格の予測などを確認できます。
市場価格をこまめにチェックする習慣をつければ、「明日は価格が高騰しそうだから、エアコンの使用を控えめにしよう」「週末の昼間は安くなりそうだから、まとめて掃除や洗濯をしよう」といった、計画的な節電が可能です。
市場連動型プランに関するQ&A

ここでは、市場連動型プランを検討する際によく寄せられる質問と回答をまとめました。
契約前の最後の疑問解消の参考にしてみてください。
契約期間や解約金はありますか?
契約期間や解約金の有無は、電力会社によって異なります。
契約期間の縛りがなく、いつでも解約できるプランもあれば、更新期間以外の解約で解約金がかかるプランも存在します。
あとでトラブルにならないよう、契約前には必ず重要事項説明書に目をとおして、解約に関する条件を確認することが重要です。
引っ越しの際はどうすればよいですか?
引っ越し先でも同じ電力会社の市場連動型プランを継続して利用する場合は、事前に電力会社へ連絡し、住所変更の手続きをおこないます。
引っ越しを機に解約する場合は、現在の電力会社へ解約の申し出をするとともに、引っ越し先で新たに契約する電力会社へ申し込みの手続きが必要です。
いずれの場合も、1か月前など早めにはじめることをおすすめします。
停電しやすくなったりしませんか?
電力会社を切り替えたからといって、停電が起きやすくなる、あるいは電気の品質が落ちるといった心配は一切ありません。
どの電力会社と契約していても、電気はこれまでと同じ大手電力会社が管理する送配電網から届けられます。
電気を安定供給する仕組みは変わらないため、契約先によって停電のリスクが生じることはありません。
参照元:よくある質問 – 経済産業省 資源エネルギー庁
どの電力会社が市場連動型プランを提供していますか?
市場連動型プランを提供する代表的な電力会社としては、「市場電力」や「Looopでんき」、「オクトパスエナジー」などが挙げられます。
ただし、会社ごとにサービス料や電源の構成、アプリの使いやすさなどに違いがあります。
契約を検討する際は、複数の会社の公式サイトで料金シミュレーションをおこない、自身の使い方に最もあった一社を慎重に選ぶことが大切です。
従来の固定料金プランはどこで契約できますか?
東京電力や関西電力といった、地域の大手電力会社が提供する「従量電灯」プランが代表的な固定料金プランです。
また、多くの新電力会社も、市場連動型プランとは別に、固定単価のプランを提供している場合があります。
料金体系は会社によって異なるため、各社の公式サイトで詳細を確認してみてください。
大手電力会社も市場連動型プランを提供していますか?
一部の大手電力会社も、主に特別高圧や高圧などを契約する法人向けに、市場連動型プランを提供しています。
ただし、家庭向けの主力プランとしては、依然として固定料金プランが一般的です。
家庭向けの市場連動型プランは、新電力会社が中心となって提供しています。
まとめ:リスクを理解すれば市場連動型は怖くない!賢く選んで電気代を節約

市場連動型プランは、電気を使う時間帯を自身のライフスタイルにあわせて工夫できる方にとっては、家計の大きな味方になる可能性があります。
しかし、メリットを享受するためには、価格変動のリスクを正しく理解し、自身にあった信頼できる電力会社を選ぶことが大切です。
太陽光発電事業に長く携わり電力市場に精通した運営会社が提供する「市場電力」であれば、本記事で解説した「昼間の安い時間帯」を賢く活用した節約が期待できます。
まずは公式サイトの料金シミュレーションで、どのくらいお得になるかを確認してみてください。


